長いことブログの更新をさぼってしまった。
読んだ本ログ。
「シブミ」 (上)(下)
これも「創作する遺伝子」の中に紹介されていた本から。
「日本人が書いたとしか思えない」解像度で書かれた日本人の情緒と、
「日本人ではこうは書けない」鋭すぎる切れ口のアメリカ人評が特徴的。
ほぼ日本人として成長した(でも外人の)ニコライ・ヘルであったからこそ
知りえた日本というものの情緒であり、
そうやって逆説的に生きているからこそ嫌悪してしまうアメリカ人の商人的側面の描き出し方がすごい。
ものすごい二面性のある文章だし、
ヘルの日本人である面を描いているのは何人なのか、と疑問さえ覚える。
その描写の見事さはおもしろかった。
ハードボイルド小説である部分よりもそういう精神面に触れていた描写のほうが多かったのだと思う。
ハードボイルド小説としてはそんなに楽しんでいない(そもそもそういう小説あまり読まない)。
ケイヴィングのパートはむしろ退屈であった。。。
上記を踏まえたうえで。
「サトリ」(ドン・ウィンズロウ)もちょっとは読んでみたんだけれども、ちょっとでドロップアウト。
解説すると、「シブミ」とは別の作家が、「シブミ」の主人公のニコライ・ヘルを継いだうえで
彼を主人公にしたまま、その人生の若いころを書いている、という小説なのだけれども、
(海外の小説ではそういうことがままあるらしい)
「シブミ」を、日本人であることの描写の見事さ、として読んだならば
「サトリ」は二次創作としても下の中か上程度のものでしかないという印象。
(ハードボイルド小説として読むならば単元単元としてのキレが良いので読みやすいと思う)
舞台がアジアなら中国でも日本でもいいだろ、みたいなとこがやだし、
忍者みたいなのもやだし、
原作の解像度の深さを考えればそもそもサトリなんてタイトルすらつけないだろ…
ということも考える。
二次創作だと思うからこそ、ここが嫌、みたいな感情が出てきてしまう。
日本人のやる二次創作って原作に対してきちんと理解を深めてからやるよなあ、と反面教師的に実感させられた。
たぶん原作ファンがうるさいんだよな。
なおかつ、たとえば現代、いろんなシャーロックホームズが描かれていて、
私自身は大原作のホームズに対してもあまり固定観念がないから、
各種ホームズを割と受け入れてしまっているけど、
亜種ホームズを気持ち悪い! って思っている人もいるんだろうなあ、ということにも気づいた。
小説はやっぱり作家一人が書いていると思うからこそ、なかの人物にちゃんと連続性がないと気分が悪いかなあ。
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